人工股関節手術について
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人工股関節置換術とは?
人工股関節置換術は1962年イギリスで始められ、現在までに50年以上の歴史があります。20世紀の成功した手術のひとつで、成績も非常に安定しています。日本でも1年間に約5万件行われています。
変形性股関節症、関節リウマチ、大腿骨頭壊死、骨折などによって損傷した関節面を取り除いてセラミックや金属などでできた人工股関節に入れ替える手術です。
人工股関節は大腿骨側(ステム)と骨頭、寛骨臼側(カップ)の部品が組み合わさって構成されます。大きさや機種など、患者さんの年齢・活動度より適したものを選んで使用します。材質はコバルトクロム合金、チタン合金、プラスチック(ポリエチレン)、セラミックなどで作られています。
人工股関節は痛んだ大腿骨頭を切除し、金属の骨頭に交換し、傷んだ臼蓋も人工のコンポーネントに交換します。臼蓋側は金属製のカップの中に非常に磨耗に強い特殊なポリエチレン製のカップをクッションとしてはめ込んだ構造となっています。
人工股関節の固定方法として、セメントを用いる方法と、用いない方法があります。セメントは金属を骨に直接つなぎ、固定する方法で不整脈などの副作用がありますが、一般的に骨が弱い高齢者などに使用されます。一方、セメントを使用しないシステム(セメントレス)は表面に特殊な加工がされていて、手術後骨が次第に人工関節表面に入り込んで固定されます。骨が入り込んで金属と固定されるまで少し日数が必要ですが体重は手術直後からかけることが可能となります。
名古屋整形外科人工関節クリニックは東海地方で有数の人工関節手術経験数を有する専門施設です。当院は人工関節各メーカーとともに、新しい手術手技・方法や新たなインプラントの開発などの研究開発も積極的に行っています。専門施設ならではの、診断から手術、リハビリの治療まで患者さんの治療に積極的に対応しています。
人工股関節の利点は手術直後より安定した除痛効果、日常生活動作の改善が得られます。関節温存手術(骨切り手術)に比べると術後早期より荷重が可能となるため、術後1~2週間程度で退院も可能となりました。人工股関節は、術後10年の成績は安定しており、近年より長い耐久性が報告されてきています。しかし不幸にも壊れてしまった場合でも再度取り替える(再置換)こともできます。
人工股関節手術の適応
人工股関節置換術の適応は、疼痛や動作制限により日常生活が著しく障害されている患者さんとなります。
当院では日常的に毎日行われる手術で、ほぼ確実に良好な成績が得られます。
この様な症状がある時、
手術治療をお勧めします
- 歩行が休まずに続けて30分間困難の時
- 日常生活に非常に支障をきたす場合
- 夜間の痛みなど安静時にも痛みがある場合
当院の人工股関節置換術の特徴
確実で安全な手術
人工関節手術は、手術の際の人工関節の設置の正確性に耐用年数が影響を受けます。当院では最新の医療機器や手技を使用して高い精度での手術を行います。また専門施設ならではの専門スタッフにより確実な手術を行います。
術前の歩行の様子
術後の歩行の様子
高度な医療レベルでの専門手術
当院では手術経験を数多く有する専門医が手術をしています。その患者さんの求められる生活レベルに応じて適切な人工関節を選択します。
非常に技術を必要とする手術ですが、専門施設ゆえ高度な医療レベルで行うことにより、非常に安定した確実な治療成績が得られており様々な学会においても成績を報告しています。
術後の痛みや負担が出来るだけ少ない術後管理
手術後の全患者さんはリカバリールーム(術後回復室)に入って頂き、専門看護師が付き添い痛みの管理、全身状態の確認を行います。術後早期に生じやすい合併症が起きないように最大限の注意を払います。
手術は下半身麻酔(脊椎麻酔)と静脈麻酔(眠り薬の点滴)にて行います。術後の痛みは、痛み止めカクテルを使用することで、患者さんの術後の痛みもかなり楽になりました。また全身麻酔では術後の全身疲労により翌日は起きられないなどの問題がありますが、負担の少ない下半身麻酔により手術翌日から歩行練習を開始することができます。
手術後の経過について
術後1日目より術後スケジュールに沿ったリハビリを開始し、約1~2週間で杖歩行での退院となります。手術後1ヶ月くらいで車の運転、2~3ヶ月くらいで自転車、手術後半年くらいでジャンプを伴わないスポーツであれば可能となります。
退院後は、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、半年、1年後、それ以降は半年から1年に一度診察を行い、人工関節に問題が生じていないか経過観察をしていきます。
合併症について(手術の問題点)
人工股関節手術は劇的に症状が改善するすばらしい手術ですが、問題点(合併症)もあります。問題がおきないように十分に対策をして手術を行います。
カッコ内%は当院医師によるこれまでの合併症の発生率です。
脱臼 (0.6%)
一般に術後脱臼率は0.5~6.0%と報告され脱臼は術後3ヶ月までが発生しやすく、股関節周囲組織(関節包・筋肉)の回復が得られるまで自分の脚のコントロールが不自由であるためとされています。
感染 (0.1%)
人工関節手術では細菌感染の頻度は一般施設において0.3~3.0%程度と報告されています。人工関節で感染した場合、最悪時には挿入した人工関節の抜去しなければならないこともあり、その予防、早期発見が必要です。
深部静脈血栓症(DVT)、症候性肺梗塞症(PE) (0.0%)
術後の臥床安静などが原因となり下肢の静脈に血の塊(血栓)が出来やすくなります。その殆どが無症候性ですが、時に致命的な肺梗塞を生じることもあり予防が重要です。発生率は一般的に深部静脈血栓症は10-20%、肺塞栓症は0.5%程度と報告されています。当院では弾性ストッキングの装着、予防的抗凝固療法などを施行して予防しています。
血管・神経損傷 (0.1%)
手術中、手術後に血管神経に傷がつく可能性があります。一般的に1%以下の確率で発生するとされています。
手術中の骨折 (0.7%)
骨がもろい患者さんでは人工関節挿入時などに手術部位周囲の骨折が起こることがあります。ワイヤーなどにて、固定し対応します。一般的に1.0~5.0%で発生するといわれています。骨がもろい患者さんに対しては術前から治療を開始します。
人工関節の緩み
人工関節の耐用性は非常に安定しており、10年で5%以下でゆるみが発生すると報告されています。正確かつ確実に人工関節を挿入するほど、緩みの発生は少なくなります。緩みが生じた際は放置すると人工関節周囲の骨折を生じることもあるため人工関節入れ替え手術(再置換術)を施行します。
手術前後の基本的な診察の流れ
- 初診
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紹介状をお持ちであれば御持参ください
- 診察
- レントゲンや血液検査など各種検査
- 外来
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- 手術、入院申し込み、手術前リハビリテーション
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自己血採血
人工股関節置換術:外来1日、もしくは日にちを分けて採血する場合があります。
人工膝関節置換術:自己血採血は基本的には行いません。 - 術前全身スクリーニング検査
- インフォームドコンセント(手術説明)
- 入院(手術日の前日)
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前日が土日を挟む場合は、金曜日入院となります。
前日が祝日の場合は、前々日の入院となります。
- 手術
- リハビリテーション
- 退院(手術後1〜2週間後)
- 外来フォローアップ
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手術後1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、半年、1年後、それ以降は原則として半年に一度の診察となります。